バッテリー・ディケイド 第19回

2026.10.01 コラム トピックス

本連載「バッテリー・ディケイド」は、EVを含む蓄電池とその周辺領域の歴史・技術・資源・地政学・市場などを取り上げ、バッテリー・ディケイド時代に知るべき「新しい蓄電池の教養」を解説する。特に明記しない場合、蓄電池(バッテリー)はリチウムイオンを指す。

「確保された容量を、どう扱うか」
──19,114万kWの棚卸しと、蓄電池だけに来た発電側課金15〜19%

前回、本連載は「連系済み64万kW対、接続検討1億7,200万kW」という2025年12月末の数字から始めた。半年後の2026年3月末、連系済みは84万kWへ、接続検討は19,114万kWへ、どちらも増えていた[1]。8月1日に始まった件数上限は、この3月末の数字にはまだあらわれていない。入り口を絞る策が効きはじめる前の、いわば助走の記録である。同じ8月、規律はもう一段先へ動いた。接続検討料そのものの引き上げ、低圧蓄電池への網掛け、契約申込済み約35GWの棚卸し。そして皮肉にも、その棚卸しの主体である送配電事業者自身が、系統情報6,552箇所の誤りを認めた月でもあった。


1.半年でどう動いたか

2026年3月末時点、全国の系統用蓄電池は、連系済み84万kW、契約申込受付中3,527万kW、接続検討受付中19,114万kWという三層構造にある。前回取り上げた2025年12月末の数字(連系済み64万kW、契約申込約3,000万kW、接続検討約1億7,200万kW)と比べると、三つの数字とも膨らんでいる(図1)。逆三角形のかたちそのものは変わっていない。

図1 系統用蓄電池の三層構造(2025年12月末→2026年3月末、対数目盛)

エリア別に見ると、接続検討の滞留は東北にもっとも集中している。7,544万kWで、全国の四割近くを占め、前年同期から3,382万kW増えた[1](図2)。東京(3,611万kW、+1,820万kW)、中国(2,121万kW、+1,080万kW)も大きく伸びている。北海道(842万kW、▲99万kW)と九州(1,348万kW、▲163万kW)はむしろ減っており、契約申込段階へ進んだのか取り下げが進んだのか、資料からは読み取れない。

図2 系統用蓄電池の接続検討容量(2026年3月末・エリア別、括弧内は2025年3月末比)

2.「入口」だけでは止まらない

ここでひとつ、時系列を整理しておきたい。8月1日に始まった一事業者あたりの接続検討数上限は、東京電力パワーグリッド11件、関西電力送配電12件、北海道電力ネットワーク5件などとエリアごとに設定された[1]。だが、上で見た19,114万kWという数字は2026年3月末時点のものであり、この上限の効果はまだ含まれていない。8月に始まった策の成果を測るには、次の四半期以降の数字を待つ必要がある。今回書くのは、規律が「効きはじめる前」に、制度側がすでに次の一手を検討しはじめていたという話である。

3.規律強化「五点セット」と、次の四つの論点

8月6日の第12回次世代電力系統ワーキンググループ(資料2)は、これまで積み上げてきた対策を五点に整理した[1]。接続検討プロセスでは、土地に関する書類提出の要件化(2026年1月〜)、一事業者あたりの検討数上限(2026年8月〜)、工事費等が希望に合わない案件への早期回答(2026年4月〜)。契約申込プロセスでは、土地の使用権原提出の要件化(2026年10月〜)、保証金の引き上げと工事費分割払いの初回最低支払額設定(2026年4月〜)。このうち検討数上限と保証金引き上げの二つだけが、系統用蓄電池に限定した対策である。

同じ資料は、この五点の先に「更なる対策」として四つの論点を挙げている。接続検討料そのものの引き上げを含めた見直し、土地確保に関する追加の確約をどこまで求めるか、接続検討を経ずに契約申込へ進める低圧系統用蓄電池への対策、そして電源種にかかわらず先着優先で扱うこと自体の是非である。加えて、契約申込済みの約35GWについて、確保容量のステータスを実態調査し、事業者都合で工事スケジュールを遅らせている案件について「確保された容量の取扱い」を整理する方針も示された。これらはすべて検討着手の段階で、適用時期・水準は決まっていない。 先着優先という制度の土台そのものが論点に上がった、というところに今回の変化がある。第20回で書いた「早く申し込むこと自体に価値が生まれる」という先着ルールの歪みは、件数を絞るだけでは解消しないことを、資源エネルギー庁自身が認めた形になる。

4.蓄電池にだけ来た、もうひとつのコスト 規律とは別に、収益側でも蓄電池にだけ効く変化があった。一般送配電事業者9社が、2026年11月1日適用予定の託送料金新単価を8月24日に公表し、蓄電池の放電に直接かかる発電側課金(系統連系受電サービス料金)が軒並み上がった[1](図3)。東京電力パワーグリッドは基本料金が1kWあたり87円01銭から100円12銭へ、率にして15.1%の上昇。東北電力ネットワークは17.6%、関西電力送配電は18.6%の上昇である。10MWの系統用蓄電池で試算すると、年間のコスト増は東京で約157万円、東北で約196万円、関西で約219万円にのぼる。

図3 発電側課金・基本料金の改定(2026年11月適用予定)

理由として各社が挙げるのは、レベニューキャップ制度(収入上限制度)の期中調整による、物価・労務費・金利上昇の反映である。制度としての説明は成り立つ。だが第19回で見たとおり、長期脱炭素電源オークション第4回案では、蓄電池の上限価格だけが主要な脱炭素電源のなかで唯一引き下げられていた。収入側で唯一下がり、費用側では他電源と同じ理由で上がる。蓄電池の収益スタックにとって、この二つは別の審議会・別の制度から来ているが、効く方向は同じである。

5.制度が、自分の数字を間違えていた

8月にはもうひとつ、規律の土台そのものに関わる事案があった。東京電力パワーグリッドが自社ホームページで公表していた系統情報のうち、6,552箇所に誤りがあったことが確定し、この情報をもとにした2,766件の回答(事前相談・接続検討)に誤りが生じていたことが判明した[1]。誤りがあった項目は、出力制御に影響を与える主な設備名、潮流実績、潮流実績における運用容量値など、用地選定と事業性判断の根拠そのものである。

発覚の経緯は2026年1月13日、千葉エリアの設備名の相違を事業者から指摘されたことにはじまる。同日ホームページを公開停止し、2月2日に全エリアで公開を停止して全数調査を開始、5月12日に全容が判明し、6月2日に修正後の情報を公開、同日、経済産業省から電気事業法第106条第3項に基づく報告徴収を受けた。8月3日に報告を提出し、8月6日に指導を受領している。東京エリアで2026年6月2日以前に事前相談・接続検討の回答を受けた案件は、回答内容が誤っている可能性が残る。

土地の確約を求め、検討料の引き上げを論じ、契約申込済み案件の実態を棚卸しする側が、自らの系統情報を誤って公開していた。事業者に「本気度」を問う制度が、自分の足もとのデータの精度を問われた月でもあった。

6.おわりに──絞るほど、精度が問われる

8月の三つの動き──接続検討中容量の拡大が止まらなかったこと、規律強化が「入口」から「出口」へ広がったこと、そして系統情報の誤り──は、別々の資料・別々の理由で起きている。だが、三つを並べると、ひとつの筋が通る。希少な系統容量をどう配分するかというルールを重ねるほど、そのルールが依拠する基礎データの正確性そのものが問われてくる。件数を絞り、検討料を上げ、土地の確約を求め、契約申込済み案件まで棚卸しする。これらはすべて、「本当に事業化する案件だけを通す」という同じ目的に向かっている。しかし、その判定のもとになる系統情報が6,552箇所間違っていたなら、絞り込みの精度自体が揺らぐ。

次回以降、注視すべき点は三つある。「更なる対策」四論点がどう具体化するか。10月1日から始まる土地の使用権原提出の要件化が、実際にどれだけの案件を足止めするか。そして東京エリアの誤回答の是正が、いつ、どこまで進むか。系統接続という希少資源の配分は、今回も答えの出ない回になった。


[1]資源エネルギー庁 第12回次世代電力系統ワーキンググループ 資料2「系統用蓄電池をはじめとする発電等設備の迅速な系統連系に向けた対応について」(2026年8月6日)3ページ、グラフ「系統用蓄電池の接続検討・契約申込み・既連系の状況(kW)」の2026年3月時点データラベルによる。2025年12月末の数値は第9回同ワーキンググループ(2026年3月27日)資料による(第20回注45に同じ)。https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/012_02_00.pdf

[2]前掲注1に同じ資料2、4ページ「系統用蓄電池の接続検討・契約申込みの状況(エリア別kW)」による。括弧内は2025年3月末時点からの増減。一般送配電事業者の集計データをもとに資源エネルギー庁が作成したもので、集計対象は各手続段階の高圧以上の蓄電池、数値は小数点第1位を四捨五入した値。

[3]東京電力パワーグリッド「【高圧・特別高圧】系統用蓄電池における一事業者あたりの接続検討数の上限設定による対応について」(2026年7月24日)。https://www.tepco.co.jp/pg/consignment/workshop/information/renewable/adjustment/20260724_01.html 関西電力送配電(12件)・北海道電力ネットワーク(5件)の上限数は業界レポート(蓄電所ビジネス実践ナビ「5分でわかる今月の蓄電所規制変更 2026年8月レポート」note、2026年9月1日)による。各社公表資料での直接照合は未了。

[4]前掲注1に同じ資料2。五点セットの整理と「更なる対策」の四論点は、同資料の記述を報じた前掲業界レポートによる。資料2本体での該当頁の照合は未了。

[5]東京電力パワーグリッド「託送料金単価の算出に関するお知らせ」別紙(2026年8月24日)4ページ、「○系統連系受電サービス料金」の表による。基本料金87円01銭→100円12銭(差引13円11銭)。https://www.tepco.co.jp/pg/company/press-information/information/2026/pdf/26×3402.pdf 東北電力ネットワーク(https://nw.tohoku-epco.co.jp/information/1248954_2390.html)・関西電力送配電(https://www.kansai-td.co.jp/corporate/press-release/2026/pdf/0824_1j_01.pdf)の単価・上昇率は、前掲業界レポートが引用する各社2026年8月24日公表資料による(直接照合は未了)。10MW試算は、基本料金の増分(東京13円11銭、東北16円33銭、関西18円25銭/kW・月)に10,000kWと12か月を乗じた筆者試算。

[6]東京電力パワーグリッド「当社ホームページ上の系統情報の一部誤りおよび系統接続における回答誤りに係る経済産業省からの指導について」(2026年8月6日)https://www.tepco.co.jp/pg/company/press-information/press/2026/pdf/260806j0101.pdf および同別紙(2026年8月3日、報告徴収への報告)https://www.tepco.co.jp/pg/company/press-information/press/2026/pdf/260803j0102.pdf 経済産業省による報告徴収はhttps://www.meti.go.jp/press/2026/06/20260602004/20260602004.html(2026年6月2日)。


参考文献

関西電力送配電. (2026年8月24日). 料金制度専門会合の審査結果を前提として算出した託送料金単価について. https://www.kansai-td.co.jp/corporate/press-release/2026/pdf/0824_1j_01.pdf

経済産業省. (2026年6月2日). 東京電力パワーグリッド株式会社に対して電気事業法に基づく報告を求めました. https://www.meti.go.jp/press/2026/06/20260602004/20260602004.html

資源エネルギー庁. (2026年8月6日). 系統用蓄電池をはじめとする発電等設備の迅速な系統連系に向けた対応について[第12回次世代電力系統ワーキンググループ資料2]. 経済産業省. https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/012_02_00.pdf

東京電力パワーグリッド株式会社. (2026年7月24日). 【高圧・特別高圧】系統用蓄電池における一事業者あたりの接続検討数の上限設定による対応について. https://www.tepco.co.jp/pg/consignment/workshop/information/renewable/adjustment/20260724_01.html

東京電力パワーグリッド株式会社. (2026年8月3日). 当社ホームページ上の系統情報の一部誤りおよび系統接続における回答誤りに係る報告徴収への報告について[別紙]. https://www.tepco.co.jp/pg/company/press-information/press/2026/pdf/260803j0102.pdf

東京電力パワーグリッド株式会社. (2026年8月6日). 当社ホームページ上の系統情報の一部誤りおよび系統接続における回答誤りに係る経済産業省からの指導について. https://www.tepco.co.jp/pg/company/press-information/press/2026/pdf/260806j0101.pdf

東京電力パワーグリッド株式会社. (2026年8月24日). 託送料金単価の算出に関するお知らせ[別紙]. https://www.tepco.co.jp/pg/company/press-information/information/2026/pdf/26×3402.pdf

東北電力ネットワーク. (2026年8月24日). 託送料金単価の算出に関するお知らせ. https://nw.tohoku-epco.co.jp/information/1248954_2390.html

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